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広大な中国大陸を舞台に、およそ千八百年前に繰り広げられた三国時代をモティーフとして、現代中国の深部を覗いてみたいという旅を始めてから二十年余の歳月が流れた。この間、大陸を車、列車、船などで移動した総距離は、五万キロメートルを超えている。地球一周が約四万キロメートルだから、考えてみると途方もない距離となる。撮影したカット数も十万カットを超えるだろう。僕の人生の三分の一強の時間を費やした計算になる……。

今回の出品作品十五点は、昨年夏、三国時代には孫一族が支配していた呉国の領地だった浙江省への取材の折に撮ったものだ。三国志の舞台となると蜀国や魏国が中心で人気も高い。どうしてもこの二国に目を奪われて呉がおろそかになってしまう傾向があるのだ。三国では一番最後まで国が存続していたのは呉であるのに……。

日中国交正常化四十周年となる2012年の今年、いままで取材を続けてきた「中国―三國志巡歴」をまとめるにあたって、どうしても追加取材しておきたい土地があったのである。そのひとつは、蜀国の承相として三国志の中ではあまりにも名高い諸葛亮、その末裔たちが暮らしているという蘭渓市の諸葛鎮。二つ目は、呉国の帝となった孫権一族の故郷である富陽市龍門鎮。そしてかつてのこの地方の風情を色濃くとどめている紹興市の安昌鎮などを一週間ほどかけて巡った。夏の盛りのハードな旅程であったこともあって、日射病や脱水症状などで苦しんだ。しかし、千八百年前の歴史上の英傑たちを自分たちの祖先として崇め、祀り、その教えをいまに活かして暮らしている人々の精神に何よりも興味を覚えた旅であった。

世界第二位の経済大国に発展し、米国と肩を並べる現代中国。一方、僕が見てきた中国もまた真実なのである。

今回の撮影はすべてタムロン18-270mm(B008)一本で行った。気温が四十度近く。それも取材地を探しながらの撮影。そしてうまくコミュニケーションが取れないなどの悪条件の中での取材には、コンパクトで多様性のあるレンズに限るのだが、B008はまさにその期待に応えてくれた。特にスナップ撮影に抜群の威力を発揮してくれるレンズである。