今回は「PHaT PHOTO」や「御苗場」のプロデューサーとしても活躍中の写真家・テラウチマサトさんの登場です。

oneclick_vol_64_01

コピーライターの彼の名前は発音しづらく、ラップと呼んでいる。ラップミュージックの天才なのだ。

日本人が誤解していることわざに「不言実行」という四字熟語がある。本当の意味は、”言葉では伝えられないので、じっさいにやってみせる”ということだ。言葉で表現するには難しい、微妙な空気やニュアンスは確かにあって、話すより見せた方が速い!ということはよく理解できる。小林秀雄は、そのことを「言絶える」と表現している。実際に目の前で見せてもらえたら呑み込みは速いしわかりやすい。

人類が誕生して以来、言葉が生まれるまでに一体どのくらいの年月があったのだろう?おそらく言葉ができてからの歴史の方が随分と短いはずだ。我々の祖先は言葉がなくてもコミュニケートできた時代を持っている。


oneclick_vol_64_02

PULSE MUSICの社長、JK。イタリアンボーグのCMミュージックなど、映像に流す音楽制作の会社を経営している。大きなビルの中にいくつものスタジオを持っている。

“ノンバーバルなコミュニケーション”or”言葉に頼らない伝達”。

花を贈るとか、机を叩くとか、ものを投げるとか、あるいは、笑顔やウインクや涙。ものや体を使って表現する能力。これも大切なコミュニケーション能力だ。実際、写真家という仕事はノンバーバルな世界で成立していかねばならないから、言葉に頼らないコミュニケーションの引き出しはとても多く持っている。


oneclick_vol_64_03

ダスティン・ホフマン似のレノは、NYの有名な印刷会社DUGGALの中に工房を持つ社長。ビルボードなど特別な技術を要する印刷を得意にしている。私の英語を唯一褒めてくれる人。

ポートレイトを撮影するとき、大切なことは何だと思う?と聞くと、”被写体とのコミュニケーション”という答えがよく返ってくる。しかし、実際はコミュニケーション能力とは何かが解っていないことが多い。

ブラジル人のモデルとコミュニケートするとき、一般には日本語や英語での会話は無理だ。フランス人のモデルやロシアのモデルが必ず英語が話せるとも限らない。実践では、話すより態度でコミュニケートした方が効果的だ。


oneclick_vol_64_04

アメリカを代表する広告制作会社GREY社長のトーア。長身でクールでクレバー!カンヌ映画祭でとったライオントロフィーが毎年エントランスにたくさん並べられる。

私はポートレイトの撮影で単焦点のレンズを使うことが多い。開放値が大きくボケ味を活かせるということもあるけれど、本当の目的は、ノンバーバルなコミュニケートのために使う。その理由はこうだ。単焦点のレンズを使うとき、被写体との距離を自分の体を動かすことで調整する。アップならぐっと寄るし、引きなら下がって距離をとる。ズームレンズのときでさえ自分が動くようにしている。

なぜなら、被写体との距離がポートレイトでは重要なノンバーバルコミュニケーションになるからだ。近寄るとか離れるとかで、相手にこちらのノリや気持ちを伝える。

写真はNYの友人たちのポートレイト。英語がそれほど堪能でない私がNYには多くの友達を持っている。

それは、言葉に頼らないコミュニケーションのお蔭に他ならない(^^)!